再考シニア消費 第2回 日本元気シニア総研 顧問 富田眞司
この原稿は日経MJに連載された富田眞司執筆第1回2017年5月26日掲載原稿に加筆したものです。

高齢者の特徴を理解していないとシニアビジネスは成功しない。今回はシニアの「経済」、「体力」、「性格」の3つの面からシニアの特徴分析とその対策を提案する。

1.経済面では総支出が減る、医療費以外が減少する。
 経済面では定年退職で仕事を辞めると年金生活で収入が減り、生活費も減る。定年後、仕事をしていない人の月額支出は24.5万円(2015年家計調査年報、65歳以上の無職)で60代前半の全世帯平均29.6万円の83%の支出に減少、支出内容も変化し、教育費の大幅減少や、交通・通信費や衣料関係費なども多く減少、その他の費目も減少する。逆に高齢化に伴う体調不良などで医療費のみが1割程度増加する。総支出額減少へは「見る目がしっかりしている」シニアには「納得できる価格、割引、会員制など安く購入できる仕組みづくり」が求められる。教育費などの減少する支出への対策は、退職後、自宅に閉じこもっていないで「仕事、趣味、学び、社会貢献などへの参加を呼びかけ、新たな需要を創造する対策」が必要になる。増加する医療費へは「認知症など高齢化に伴う体調不良や病気の予防や対策」、「栄養バランスのとれた食事摂取や運動促進」などがある。

2.体力面では加齢で体調や体力が衰える。
 次に体力面では加齢で体調や体力の衰えなどが出るため、それを補う対策が求められる。「朝が早い、夜も早い」ことへは「早朝営業喫茶や朝食の提供、早朝イベント」を開催する。「目が良く見えなくなる」ことへは「大きな文字表示、読みやすい色づかい、音声ガイドなど、広告物や店頭POPなど」などで対応する。「歯が悪い・食が細い」ことへは「柔らかめの食事、小分け食品、栄養バランスを考える食品」などで対応する。「足が遅い、段差が厳しい」ことへは「売り場などでは段差少なくする、広い通路や休憩所を多く設置すること、通販など宅配対応、住まいから近い場所にお店を設置する」などで対応する。「耳が遠い、聞きにくい」ことへは「ゆっくり話す、大きい声で話す、紙に書いて説明する」などで対応する。

3.性格面では豊富な知識の反面、頑固になり、男女差もでる。
 さらに、性格面では高齢化で新しいものへの関心が弱くなり、頑固になる傾向が出る人が多い。人生経験が豊富なシニアは知識も豊富で確かな目をもっている。こうしたシニアへの対応は「礼を尽くす。ぞんざいに扱わない。教えていただく心構えを大切にする。質の良い商品やサービスを提供する。」などがある。一方、頑固な性格になる点は、「気にいると長く使う」メリットにも繋がるため、「丁寧に何度もやさしくわかりやすく説明する。売り場や商品を頻繁に変えない。」ことや、お客様を大切にし、組織化を図ることで、継続購入を促進することができる。女性は「買い物にも慣れ、経済感覚が強い」ため、「聞き役となることや、こまめに割引やプレゼントの実施、お買い得感を出すこと必要になる。一方、男性は「会社時代の影響で上から目線や意見を言うことや短気な点、怒りやすい点」もあることへの対応は「聞き役になり、丁重に対応する。向きにならない。意見や提案を求める。」ことなどがあげられる。
実際にシニアビジネスをする際には、ビジネスターゲットとするシニアの世代、健康、資産・収入、生き方やライフスタイルなどの特性にマッチした施策が求められる。


(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)