亡くなった人の車、どうやって売る?
不幸にも大事な方が亡くなってしまった・・・悲しみに暮れながらも遺品整理や遺産相続で大忙し、そんな中で亡くなった方が「所有者」となっている自動車がありました。
しかし誰もその車を必要としないため、売却することにしたのですが、所有者死亡の車をどうやって売ったらいいのでしょうか。
手続きや流れについて詳しく見ていきます。
原則、所有者が亡くなった車は売ることができない
通常、買取店や中古車販売店などで車を個人レベルで売却した時にオーナーから買取店や中古車販売店に名義を移す、名義変更という手続きをすることになるものですが、その名義変更は基本的に・・・
「生きている人間」から「生きている人間」へ
または
「生きている人間」から「存在する企業・団体」へ
と名義を移行させる形を取ることで行います。
しかし、所有者をなっている方が死亡してしまい、既に戸籍から除外されてしまっている場合は「生きている人間」とならないため、名義変更手続きができません。
名義変更手続きができないということは、車を売ることもさることながら永久抹消登録、廃車すらできないということになります。
だからといって亡くなった方を生き返らせることなど現在の科学ではできませんので、こういった時は特別な措置を取るしかありません。
亡くなった人の車を売る流れ
先程もいいましたが亡くなった方が所有者となっている車は自由に売ることはできません。
正確にいえば売るための契約と名義変更ができないということになりますが、これは所有者となっている方が法的に存在しない形になっているからで、存在する形にすればいいわけです。
その方法が、「相続人への名義変更手続きを行う」というやり方です。
法律では「自動車」はお金や土地、建物、貴金属などと同じ財産として認められており、所有者が死亡した際に遺産相続の対象となります。
要するに自動車に関しても亡くなった方から相続人へ遺産相続手続きを行えば、その自動車の名義が活きることになり、その方の名義をつかって、通常通りの売却をすればいいということです。
大雑把な流れはこんな感じ・・・
1・・・相続人の決定
2・・・亡くなった方から相続人への名義変更手続き
3・・・売却先の選定、査定などといった売却準備
4・・・売却(相続人から買取店や中古車販売店などへの名義変更手続き)
なのでまずは遺産相続から始めます。
ただ、遺産相続といっても単純ではなく、遺産相続の形態によっては亡くなった方から相続人への名義変更の方法が少し違ってきますので注意が必要です。
・相続人が1人、または1人が相続する
例えば、夫婦二人だけの家族、親子二人きりの家族といった構成で夫やお父さんが亡くなってしまいおのずと遺産相続人が一人の人間に決められてしまう場合、あるいは子供がいる家族など複数の遺産相続人がいて、その中で遺産分割協議書などによって自動車の相続を1人の人間が受ける場合がこれに該当します。
早い話、故人から1人の人間へ自動車を相続するという形です。
・相続人が複数いる共同相続の場合
対して、遺産相続人が複数いて、遺産分割がうまくいかない、不公平が出るため自動車1台の相続人すらも決めることができないといった場合に1人の相続人に自動車の相続をするのではなく、複数の相続人に相続し、「所有者」は共同名義、「使用者」に代表者一人を設定するといった形になります。
共同相続より単独相続の方が利便性が高い
相続をした車をこれから売却をするということを前提にして考えるのであれば、複数の相続人が存在する共同相続より、1人に相続される単独相続の形を取った方が何かと便利です。
買取店や中古車販売店などで車を売却するということは金銭の授受の他に名義変更手続きといった法的な手続きを行わなければなりません。
得てしてそういった手続きは何かと事実を証明する必要性が出てきてしまい、共同相続では相続人すべての許可が必要になり、書類としても・・・
・全員の実印が押された委任状
・相続人全員の印鑑登録証明書
・相続人であることを証明する相続人全員が掲載された除籍謄本
などが必要になります。
特に相続人がバラバラに暮らし、住んでいる場所も遠くとなってしまうと委任状に実印を押すことも大変ですし、印鑑登録証明書を集めるのも大変です。
自動車以外の遺産相続に関してもそうですが、その後の手続きの手間を少しも楽にしたいのであれば、できれば共同相続ではなく、単独相続として一人の人間が自動車を相続するという形を取った方がいいかと思います。
※ツイッターでも車の遺産相続についてこんな発言が・・・・
父親の乗っている車が古くなり、姉の乗っている車を譲り受けることに。
— かおり。 (@kaorismaru) 2016年10月23日
で、今乗っている車を処分しようとしたら、名義が亡くなった母親になっていて、面倒臭いことに。
相続放棄の手続きしないと処分出来ないんですってーーー。
手続き関係全部終わったと思ってたのに、こんなとこに残ってたよ。
名義変更手続きに必要な書類
だいたいこういった手続きにはいろいろな書類が必要なもので、それを集めるのに大変な思いをしますが、今回は遺産相続ということも含めて考えていかなければなりませんので、よくある一般的な「名義変更手続き」よりも必要とする書類が多くなります。
必要とする書類は以下のようなものです。
・除籍謄本(戸籍謄本)
これは元オーナーが死亡していることの証明と相続人の存在を証明するために必要となります。
死亡したオーナーが除籍されていること、それから相続人の全員の氏名が掲載されていることが必須です。
ちなみに戸籍関連が電子化された際に2004年以前の戸籍の動きがすべて消去されてしまっているため、例えば2004年以前に結婚などで戸籍を抜いている場合では除籍謄本にその方の名前が掲載されていませんので、その場合は別途「改製原戸籍」という過去からあったすべての戸籍の動きを記載したものも取る必要があります。
どちらも故人の本籍地としていた市区町村のお役所でとることができます。
・遺産分割協議書
これは遺産として残されたものを誰が何を相続するのかということを記載し、それを公的に証明したもので、明確な相続の内訳と相続人全員の実印の押印が必要となります。
書類の作成は弁護士さんや行政書士さんにお願いするのが一番楽ですが、国土交通省のWebサイトにフォームが用意されているのでそれをダウンロードして自らが作成してもいいでしょう。
(参照:遺産分割協議書ダウンロード(国土交通省))
ちなみに相続人が当初より一人である場合は必要ありません。
・申請書
登録車であれば運輸支局、軽自動車であれば軽自動車検査協会に用意されているもので、必要事項の記入と共に登録車では実印が、軽自動車では認印の押印が必要となります。
・印鑑登録証明書
これは登録車を扱う時に必要なもので、申請書に実印を押す必要があるためその証明のために必要となります。
軽自動車は認印で手続きすることができますのでいりません。
取得場所は相続人が現住所とする地域のお役所となります。
・車検証、自賠責保険証書
これは一般的な名義変更と同じように必要となります。
車のグローブボックスなどに入れられていると思います。
・自動車税納税証明書(軽自動車税納税証明書)
相続に関わる・関わらないによらず、名義変更手続きをするためには今期までの自動車税を全て納めていなければできないようになっています。
そのため、例えば昨年度の自動車税が納められていないとか、今年度の分を収める前に無くなってしまったといった場合は、その車を相続した人間が未納となっている自動車税を納めて、税務署などに納税証明書の発行を依頼しなければなりません。
既に納税済みであれば、納付書の切れはしが納税証明書となりますが、それが見つからない場合でも税務署などに依頼すれば、新たな納税証明書を発行してくれます。※所有者名義がローンが会社だったら?
故人が生前所有していた車がローンで購入した場合ですと、所有者名義がファイナンス会社になっていることが多いです。
この場合は、まずは契約しているローン会社に連絡して、使用者(債務者)が亡くなったことを伝えましょう。
基本的にローン残債がある車を売却・処分、または相続人が使用する場合は今ある残債を一括で清算する必要があります。
しかし、一括で厳しい場合は相続人と再契約して、引き続きローンで支払うことが出来る可能性があるので、相談してみることをおススメします。
ただし、再審査が必要になる、必ずしも再契約出来るとは限りません。
車の価値が100万円以下の場合
自動車の価値が100万円以下であることが明白な場合は
が不要となります。
その代わりに実印の押印がいらない遺産分割協議成立申立書があればOKです。
(参照:遺産分割協議成立申立書(国土交通省))
ちなみに車の価値とは車の査定額のことで、買取店などで査定をすればすぐにわかりますが、そもそも買取店や中古車販売店の査定額というのはあいまいなものでそれを証明する書類などはありませんので、JAAI日本自動車検査協会といった団体の査定を受けて査定額を証明する書類を取るといいでしょう。
※関連ページ車の査定書が必要な場合はどうすればいい?
ただ、どう見ても100万円もの価値がつくはずがないといったような車では査定額を証明する書類は必要ありません。
軽自動車の場合
軽自動車の場合は、申請する場所が違うのと同様に必要となる書類に若干の違いがあります。
違いあるといっても
・手続きに実印を使わないことによる印鑑登録証明書
・除籍謄本(戸籍謄本)
名義変更手続き方法
相続の名義変更手続きにおいても書類に多少の違いはあるものの、手続きをする方法は普通の名義変更手続きと変わりません。
必要書類を持って
・普通車:相続人住所を管轄とする運輸支局
・軽自動車:相続人住所を管轄とする軽自動車協会事務所
に出向いて行います。
その場で申請書類を手に入れたり、手数料として数百円の印紙を買うことになりますが、わからない場合は案内カウンターなどがありますのでそこで聞けば丁寧に教えてくれますので、それに従って動けば簡単に終わります。
※納税義務も自動的に移行する
相続による名義変更を行うとその手続きと同時に自動車税、軽自動車税の納税義務も自動的に新しい所有者に移行する形となります。
名変後は自由に売却出来る
相続による名義変更手続きがおわり、新しい車検証の所有者のところに相続人に名前が記載されたら、あとは相続と切り離して考えることができます。
相続人に名義は移り、その方の車となりましたので、あとは「煮るなり焼くなり」・・・ではなく、売るなり何なり自由です。
普通に車を売る時みたいに一括査定サイトやオンライン査定を利用するなりして、買取店や中古車販売店とアクセスを取って、査定から売却に至るといった流れで行けばいいかと思います。
買取店や中古車販売店でも相続手続きができる
ここまでは・・・・
・自分で相続による名義変更手続きする
↓
・売却する
といった2段階で売却する方法をお教えしましたが、実は買取店や中古車販売店に相談をすれば、相続による名義変更をする前でも車を売却をすることができます・・・といっても実は一見するとすべてまとめて楽にできるように見えますが、内部で先程と同じようなことをしているだけです。
それもそのはず、故人のものでも勝手に売却することはできませんので、買取店や中古車販売店がまず相続による名義変更を行った後に相続人から自店舗への名義変更を行っているだけなのです。
しかし、こういったことを買取店や中古車販売店にお願いすると、当然ながら手数料というものがかかるわけで、場合によっては実費で支払う、あるいは買取金額から差し引く、あるいは当初の査定額を低くして充当させるという形を取られてかなり安い金額で買取られてしまう危険性をはらんでいます。
しかし、身内がなくなって混乱しており、精神的に疲弊している時は全部自分でやろうとせず、知識も経験も豊富な行政書士や買取店などの各業者にお願いしたほうが得策でしょう。
まとめ
まとめると亡くなった方の車を売る流れ、方法は以下の通り↓
@まずは”相続人”を決定する。
A相続人に名義変更を行う
B車を売却する。
亡くなってしまった方の車を売却するにはとりあえず生きている人間のものにすることが先決です。
そうすればあとは特別なことはなく、通常の手続きを踏むだけで簡単に売却できるでしょう。
また、任意保険などの名義変更も忘れずに。
故人の遺産相続は、個人が生前遺産整理していない場合は、残された者が色々苦労するものです。
自分の力で全て行うのもいいですが、車の相続、売却については各業者で行ってくれるので、頼れるものは頼って精神的な負担を減らすのも手です。