超高齢社会の日本、新たなビジネスチャンスを目指し、シニア市場に参入する企業が増えているが、実績が出ない現実もある。
理由はシニアの実態がつかめていないからだ。
人口は増えているがシニアは年齢幅が広いこと、健康、保有資産、生まれ育った時代の社会環境、生き方などで大きな違いがある。
総人口の28%を占めるシニアはひとまとめで把握できない。
安易な調査からではシニアの実態が見えてこない。
再考シニア消費では77歳の筆者がシニア目線からビジネス提案を行ってきた。
最終回は総まとめとしてシニア市場の実態と需要開拓のポイントを要約する。

1.定年後は余生・老後でなく、『自分の時代』と捉える
 筆者は人生を「学ぶ時代20年」「働く時代40年」、定年後を「自分の時代20年」と捉え、3つにわけ分析している。
「学ぶ時代・働く時代」は上を目指し同じ方向に向かう時代だが、「自分の時代」は体力・知力が低下する時期で、意欲や思考に個人差が大きい。
そのため、シニア市場への参入はシニアの実態をしっかりと掴む必要がある。

2.シニア市場は細分化して捉える
 細分化には世代やライフスタイル分析で、より正確に捉えることができる。
筆者は興味・関心から「8つのライフスタイル分析」を試み、対象別の特性、興味・関心、攻略法などシニアビジネスの可能性を提案してきた。

3.定年後、消費支出が減る
 定年後、無職の人は年金収入と保有資産を取り崩した生活になり支出が2割も減る。
交際費、衣料代などの出費を控え、生活必需品への出費が中心になる。この市場への進出は厳しい。

4.シニアビジネスは新しい需要を創造すること
 一方、保有資産が多いシニア、定年後も働くなどの活動を続けるシニアは支出に余裕があるものの、楽しみ方、活躍の方法がわからない実態もある。
市場開拓の方法は「新しいことに挑戦したい」「いつまでも若さを保ちたい」などのシニアの潜在ニーズの開拓や、新しい発想で新規需要を創造する方法が求められる。

5.シニアには輝いて欲しい
 筆者は定年後を「自分が主役の輝く人生にして欲しい」と願い、「GTI(G元気で、T楽しく、I生きがいをもって)で、PPK(ピンピンコロリ)」を日本元気シニア総研活動で提唱。
さらに、シニアが元気で輝くには「自分だけの目標をもち、その達成を目指し活動を続けること」で、要介護生活も減り、幸せな人生を全うできると考えている。

過日、行方不明の2歳児を発見し、話題になった尾畑春夫さん(78歳)はボランティア活動が生きがいだ。
今、まぶしいほど輝いているシニアで、その生き方には大いに共感する。シニアが輝くには「働く」「教える」「学ぶ」「ボランティア活動をする」「趣味を楽しむ」「旅行やスポーツを楽しむ」「家族の健康や成長や守る」など選択肢が多い。

大切なことは「自分自身の目標をもち、活動を続けること」。
それが生きがいに繋がる。それを支えるビジネスこそ、今、求められている。
増加し続けるシニア各自が「自分の時代」として「生きがい」をもち活動し、「輝くシニア」が一人でも多く増えることこそが、超高齢化社会の日本に求められている。(完) (日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)

写真:定年後「自分が主役の輝く人生」をおくるシニア(散歩を楽しむ、ボランテキア活動をする、仕事をする、教える、学ぶ、趣味を楽しむなど)