寿命が延び定年後も働きたいシニアが増えているが、65歳以上の就業率は23%(総務省労働力調査2017年速報)とまだ低い。
過日、小学校の喜寿の会に参加したが、現役で働いているのは医師、弁護士、熟練工、保険業務など1割にも満たなかった。
シニアが働けない理由は2つあると筆者は考える。
第1の理由は「シニアの働く目的と人材を求める職場がミスマッチしている」こと。
定年前、部長職だったシニアは顧問や管理職などを希望するがその職場は少ない。
企業がシニアに求めるのはIT、海外活動、新規事業、経理・総務、販売戦略などの実務能力がある人材だ。
一方で人材不足業種の建築現場、清掃、飲食・介護などのサービス業、運転手などなら働く場はある。
しかし、体力を使う仕事なのでシニアが長時間働くには健康面での心配がある。
第2の理由は「働きたいシニアに必要な職場情報が届かない」こと。
定年退職すると社会との接点が減り、必要情報が届かなくなることや、シニアが積極的に情報を収集しなくなることが影響している。
求人企業もシニアに的確な情報伝達手段がなく困っている現実がある。
そこでシニアが働くための課題を解決するには何が必要か77歳の筆者がシニア目線から3つの対応策を提案する。

第1の対策は「シニアが働く目的を明確にする」こと。
収入目的なら高い能力が求められるため職場は少ない。
しかし、収入目的より健康や社会との繋がり、社会貢献などが目的で働くなら職場は広がる。
例えば「マンション管理員」は管理能力や人生経験が役に立つ。
「駐車監視員」は管理や事務能力が生かせる。また、シニアの体力、知力、健康状況に合わせ、短期間、短時間だけ働くなら選択肢は広がる。
例えば、趣味・スポーツなど本人がもつ能力や特技を生かして「講演、執筆、教育、コンセルジュ」などで働くことができる。
さらに、人材不足業種で「1日2時間だけ」「週2日だけ」「近場だけ」など時間・場所などの選択する働き方、アルバイト感覚なら「エキストラなど代行・代理」「調査・モニター」「交通整理」など、働く場は広がる。

第2の対策は「シニアの保有能力を見直し、
社会に通用する能力や社会性を身につける」こと。
1つの企業で身につけた能力が社会で通用するものとは限らないため、自分が保有する能力を再教育し、社会に通用する能力に高める。
また、今の時代に対応できる知識や見識を身につけることも大切になる。例えばIT能力はビジネスの場では必要不可欠だ。
さらに、今、シニアのパワハラ、セクラなどが社会問題化していることへの対策も重要、若者や女性への話し方や接し方には気を配る必要がある。

第3は「働きたいシニアへの働き方教育を行う」こと。
働く場が見つからないシニアにどんな働き方や職場があるか、働く際の注意点など、自分にふさわしい働き方を学ぶ場を提供する。
「働く目的」「できること」を明確にすることで希望する仕事を見つけやすくなる。
一方、シニアを働き手に求める企業はシニアの気持ちや体力を理解し、シニア目線にそった対応ができれば働くシニアが増える。
これらの対策で働くシニアが増えることは、健康維持にも繋がり医療費の削減も期待でき、シニア対策として欠かせない。
(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)


シニアが働く場:講演(右上)、マンション管理員(右下)、駐車監視員(左上)、建築現場での交通整理(左下)