(初出 2013年2月 「元気シニア時代への提言」シリーズより)

65歳以上の人口が3074万人、ますます増え続けるのが日本の現状です。総人口に占める比率は24.1%にも達しています。人口が多いだけではありません。日本人の資産が1500兆円あるなかで、シニアが60%も保有していること、さらに消費でも40%をしめていることを考えると、シニア向けのビジネスはどの業界にとっても必要不可欠となってきます。

ところが、シニアは保守的であり、しかも、限られた年金での生活を考えると、簡単には消費しません。企業はどうすべきか悩んでいます。

筆者は72歳、シニア世代であるとともに、シニアマーケティングの専門家です。シニア世代の自分にどんな販促策があれば嬉しいかという視点、そして、シニアマーケティング専門家の立場からシニアにふさわしい販促策と言う二つの視点から提案します。

1. シニア向け割引制度が嬉しい

手っ取り早いのがシニア向けの割引制度が喜ばれます。年金生活者にとって、少しでも出費を減らしたいというニーズにぴったりだからです。

具体的には、65歳以上(60歳以上含め)であれば安くなるというものです。現在、映画館、博物館などの公共事業でシニア料金が実施されています。一般企業でも、シニア向けの割引制度を導入しています。

一方、シニア向けに企業がお客様カードを発行し、カード保有者に限定して割り引く方法もあります。例えば、スカイラークグループが実施している60歳以上が使用できる「プラチナカード」があります。バーミャン、ジョナサン、夢庵、藍屋、ステーキガストなどで使用できる割引きカードです。このカードを提示すると飲食費の5%が割引されます。小生は、毎朝、ジョナサンで朝食をしていますので、結構活用しています。

カラオケルーム歌広場も「シルバーサービス会員券」を発行しています。平日限定で割引サービスが受けられます。以前は、半額でしたが、昨年秋から30%割引に縮小されています。これも、活用しています。

さらに、航空会社も旅行好きなシニアに対して組織化してシニア割引を実施しています。これらのサービスは、無料で受けられるものです。

2. 年金支給日を狙った心憎い「特典付きお買い物券」

年金は偶数月の15日に支払われます。その日はシニアにとってはまさに給料日のようなもので、財布の中身が増える嬉しい日です。

百貨店のさいか屋が運営する神奈川県内の3店では年金が支給される偶数月の15日に、年金支給日恒例の「スマイルシニアデーお買い物券」が販売されています。500円券11枚つづりで5千円。5000円支払い、5500円の買い物ができるものです。3店で用意する800冊が毎回、開店から2時間ほどで売り切れ、何と回収率は毎回ほぼ100%だそうです。2011年6月の販売開始から買い物券を買い続けているシニアもいるそうです。「余分にもらえる500円分がありがたい」とのこと、浮いた500円で少しだけぜいたくを楽しんでいるそうです。その気持ちよくわかります。

3. 友の会などシニアを有料で「組織化」し、特典を付ける

シニアの囲い込みが進んでいるのは、旅行関連などのサービス業です。

年会費を払えば、高額割引特典がつく
毎年、一定の費用を支払ってそれ以上の特典を受けるサービスがあります。旅行好きなシニアはJRが実施する「大人の休日倶楽部」がそれです。小生は活用していませんが、割引額が大きく頻繁に旅行される方にはお勧めです。

4. 目的意識の強い人達を「組織化」する

シニアをひとくくりにしないで、旅行好き、趣味に秀でた人などに特化し、組織化する方法もあります。例えば、「シニア大楽」は、シニアで講演できる人を組織化しています。健康、スポーツ、旅行、読書、俳句、落語、音楽などでお話できる人をまとめて、必要とされる場に、派遣する団体です。

一方、インターネットのSNSを使ってシニア向けに組織化しているのが、シュミート(趣味人)倶楽部です。クラブツーリズムが運営しています。旅行、音楽、カラオケ、読書など多数の趣味の仲間がSNSを使って情報交換や仲間づくりを楽しんでいます。

小生も参加していますが、多忙のためなかなか活動には参加できていません。残念ですが・・・。

5. 生活補完サービス型販促、コンシェルジュ型販促

割引という金銭的なメリットではなく、体力がなくなっているシニアが困ったことを手助けする手法も人気です。体力や知力が弱くなるシニアに生活補完をするサービスで売上の拡大を狙うものです。

例えば、購入されたシニアに家具の組み立てを補完するサービスがあります。また、夜早く寝て、朝早く目が覚めるシニアの生活にマッチさせて、旅行会社では、シニア向けツアーでは、早朝出発、早めの帰宅を取り入れています。

スーパーでも、午前7時から営業するなど、シニアの生活に合わせたサービスを実施しています。

一方、ケータイなどでは、機械操作に弱いシニアに対してシニア向けに言葉でコンシェルジュするサービスが人気を呼んでいます。

また、シニアになると、電球が切れても自分で交換できない場合もあります。それだけでは、ありません。シニアになると、いろいろ不便なことも多々生じます。そうした地域の要望にお応えしているのが「電化のヤマグチ」です。「かゆくなる前に手が届くサービス」でお客様の困ったことに対応してくれるそうです。嬉しいサービスですね。

6. お試しサービスでお気軽に試用できる

ちょっと高額な商品は中々、購入しずらいものです。購入へのためらいを払しょくする対策が「お試しサービス」です。健康食品や化粧品通販でよく行われています。

最近、新聞広告で「タイヘイの夕食宅配」が今なら半額!というキャッチフレーズで、はじめてご利用の日から1週間、通常の半額でお試しできるという広告が出稿されました。半額なら試してみて、良かったら購入しようと言う気にもなります。

7. 買い物支援にタブレット型多機能端末を提供するサービス

ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコムは、買い物に苦労する高齢者らを対象とした支援事業に参入します。タブレット型多機能端末を提供し、インターネットを通じた買い物などを手軽にできるようにするものです。東京と大阪の一部で試行を始め、2013年度に本格的に事業化する方針のようです。高齢者らは、自宅でタブレット型多機能端末の画面をみて、食料品や生活用品などを注文すれば、配達してもらえます。既存のネットスーパーなどと提携し、決済はJCOMが行い、通信料金と同時に請求する仕組みです。ネット店舗ごとに個人情報などを登録したり、クレジットカードを持ったりする必要がなく、ネットに慣れていない高齢層でも使いやすいようにしています。

シニア向け販促の現状と今後の提案

1. 現在は「価格メリットでの販促」「比較的軽い組織化」が多い

これまで見てきましたように、価格メリットによる販促がよく実施され、それなりに効果が出ているようです。

無料でお客様にカードをもっていただくことで、特典が得られる、比較的軽い組織化政策が実施されています。

2. 趣味など目的意識が高いものは、会員組織で成功

一方で、「大人の休日倶楽部など、旅行などを中心に趣味などに特化したものは、有料であっても、会員組織で成功しています。また、SNSというWebを活用した「シュミート倶楽部」も多くの仲間を集めることに成功しています。

3. 今後は、シニアの特性を考慮した、シニアに役に立つライフスタイル提案が重要になる

これからは、団塊世代などシニアがさらに増加します。元気でやる気のあるシニアです。こうしたシニアに対応した対策も重要になります。

それには、シニアをひとくくりにしないで、趣味やライフスタイルなどの特性を考えた対策が必要になります。

健康、旅行、スポーツ、趣味、ビジネスなど、シニアの生き方により特化したライフスタイル提案による販促がシニア獲得に重要な役割を果たします。

利用するメディアも、スマホ、タブレットなどWebを活用する方法も増えてくるでしょう。
(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)