(初出 2011年9月「元気シニア時代への提言」シリーズより)
毎年、敬老の日になると、高齢者人口が発表されます。今年も発表されました。その内容について触れる前に、高齢者って何歳からだと、思われますか? 若い人に質問すると、60歳以上とか、65歳以上とか色々な回答が返ってきます。一方、高齢者に質問すると、70歳でもまだ若いと感じている方が沢山おり、若ものの回答より高い年齢となっています。現に70歳の筆者にとっても、決して高齢者とは自覚していません。電車ではなるべく座らないようにしています。
話は戻りますが、高齢者って何歳からかについては、正解はありません。多くは60歳―65歳位を考えているようです。でも、企業の中には、50歳以上を高齢者と考え、シニアマーケティングを展開する企業もあります。
ただ、50歳以上をシニアとたとえると、ターゲットが広がり過ぎ、全人口の42%程度も含まれることになり、ビジネス戦略が立てられなくなります。恐らく、50歳以上とする場合の顧客の多くは50-65歳が多くなります。シニアというより、「プレシニア」、あるいは、「大人(中年)」市場と言った方が正確かもしれません。
高齢者マーケティングをリタイア後人生と捉える
では、高齢者をどうとらえるか、年齢的な区切りについての筆者の考え方を述べます。本来は年齢だけで区切るのではなく、ライフスタイルを加味して区分がよりマーケティングする上で重要です。そこで、筆者の高齢者マーケティングは、仕事をリタイアする後の人生を高齢者と捉えるようにしています。
その理由は、会社を定年でリタイアすると生活が一変するからです。定年を迎えたご主人も、家庭を支えてきた奥さんも、ライフスタイルが変わるからです。年齢的には、60-65歳となります。
定年年齢が65歳に引き上げられつつありますので、65歳に近い年齢と言えます。国が発表する高齢者人口に近くなりますので、参考になります。
今年発表された高齢者人口は、2980万人、23.3%のシェア
今年発表された65歳以上の高齢者の人口は、2980万人で総人口に占める割合は23.3%と過去最高となりました。うち、70歳以上は2197万人、75歳以上は1480万人、80歳以上は866万人と、前年に比べてそれぞれ40-70万人増加しています。
男女別にみると、男性は1273万人(男性人口の20.5%)、女性は1707万人(女性人口の26.0%)と女性のほうが434万人多くなっています。
高齢者の転入出は地方と、都市部で明らかな差が出ている
高齢者の人口移動を見ると、地方と都市部ではデータに明らかな傾向が出ています。東京や大阪などの大都市圏では、高齢者が近隣県へ転出しており、都市に比べ比較的ゆったりと生活できる場を求めています。
反面、東北や九州などでは比較的、地方の中心となる県への転入が増えている傾向が出ています。都市すぎず、田舎すぎない調度良い都市へ高齢者が移動しているようです。
高齢者の就業は緩やかな上昇傾向にある
一方、平成22年の高齢者の就業数は570万人と前年に比べ5万人増加しています。うち男性が349万人、女性が221万人となっています。また、雇用されている人は318万人で、雇用形態別にみると「非正規の職員・従業員」が162万人と高齢雇用者の50.9%を占めています。高齢者の非正規雇用は鈍化が見られるものの、近年は増加傾向にあります。高齢者がいつまでも、働くことができることは、よい傾向ですね。
高齢者夫婦の無職世帯は1カ月あたり4万1191円の赤字に
平成22年度総務省の家計調査報告書によれば、高齢者夫婦無職世帯の実収入が、22万3757円に対して、支出総額が26万4949円となっており、毎月4万1191円不足が生じています。
不足分は、預貯金や金融資産を取り崩したものが充てられています。預貯金からの取り崩しは、将来への不安を残し、つらいものがあります。でも、世帯主が高齢者で仕事をしている世帯では、収入があるため、黒字になります。いつまでも、収入があることは、いいですね。生涯現役であることは、収入の面だけでなく、健康の面でもプラスになります。
高齢者世帯の貯蓄は3年連続減少
また、高齢者世帯の貯蓄現在高は平成22年は1世帯あたり2275万円となり3年連続の減少となりました。中央値は1480万円で同様に3年連続の減少となります。65歳未満の貯蓄現在高1356万円に比べれば、高齢者は多くの貯蓄を保有していることになります。
退職者の顧問派遣事業が増加する、嬉しい話です
そんな中で、身につけたノウハウをベンチャー支援になる、退職者の顧問派遣事業が増加という嬉しい情報を見つけました。人材派遣やヘッドハンティングの会社が、中小企業やベンチャー企業の経営支援のために知識を持つ人材を顧問として派遣するビジネスに相次いで参入しているそうです。
大手企業を退職した幹部OBらが顧問に登録しているケースが多く、中小企業などから寄せられる「ノウハウの伝授を」という要望に応えるというものです。
例えば、インテリジェンスは、大手企業で部長以上のキャリアを持つOBを顧問として派遣する「i-common(アイ・コモン)」を展開しています。相談を受けた中小企業から課題を聴取し、適任者を派遣するものです。1カ月25万円以上もの報酬があるそうです。
60歳以上の会社員の4割が技能伝承できずという、調査結果
一方、産業能率大学が60歳以上の会社員を対象に実施した仕事に対する意識調査で、回答者の39.0%が「自分の技能や知識を社内で伝承できていない」と感じていることが分かりました。主な理由では「伝承する相手がいなかった」(44.4%)、「伝承を求められなかった」(37.4%)などとなっています。まだまだ、定年後の活躍の場がありそうです。
高齢者が何時までも、元気で働く場があることを期待しています。それが高齢者が健康でいる秘訣と信じるからです。
(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)