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「元気シニアへのビジネス提案の新視点シリーズ」は日本元気シニア総研 顧問の富田眞司がシニアで起きているさまざまな現象や調査データを取り上げ分析し、そのことに対してシニアビジネス提案ができないか、その可能性を提案するものです。73歳のリアルシニア目線と、マーケティングプランナー目線から新視点の提案を行うものです。

第3回 元気シニアの財布事情と、狙うべき市場とは

65歳以上の総支出は50代と比べ7割に減少、医療費は2割増加する

シニアになると「支出総額が50代に比べて、72%に減少する」
シニアがどの程度支出が減少するかを調べるために、1カ月の支出を「現役時代の50代の支出」とシニアの支出である「65歳以上の支出」を比較しました。月額支出総額が50代は295,285円に対して、65歳以上は214,266円となり、50代に比べ72.0%となっています。確実に支出が縮小します。

●シニアの支出で減少する費用は選択的支出といわれる「教育費、交通通信費、被服及び履物費」など

65歳以上のシニア世帯が実際に減少している支出の内容は、減少率の高いものから見ると、教育費、交通通信費、被服及び履物費の3つが高い減少となっています。

★教育費―50代:15,712円が65歳以上:702円と一気に縮小。
家族の成長に伴い教育費も減少します。
★交通通信費―50代:45,269円が65歳以上:22,433円と半額以下。
仕事を辞めることで行動範囲が狭くなり交通費が減ります。
★被服及び履物費―50代:12,541円が65歳以上:6,972円と半額近く。
仕事に仏様な「スーツ」「ビジネスバッグ」「ビジネスシューズ」「Yシャツ」などが不要になり普段着になります。

●シニアの支出で増加する費用―「保健医療費」

逆に増加する費用も出ています。高齢化で体力低下するために生じる医療関係の費用です。
保健医療費が50代で10,591円であったものが、65歳以上になると12,791円となり、2割もアップします。支出額が少なくなる中で金額が増えることは、シニアにとって大きな負担になります。それは高齢化による体力の衰えからくる医療費関連の出費です。高齢者の支出の中で医療費出費が大きなキーワードとなり、健康マーケットが大きな市場となります。

世代によって異なるシニアの健康対策、後半に医療費が急増する
すべてのシニアの医療費が増加するわけではありません。60代後半でも、最近では健康なシニアがたくさんいます。

内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年9月~10月実施)からシニアの中で
「健康状況がよい人」と「ややよい人」を足した割合をグラフ化しました。その結果、50代後半は62.5%あったものが、60代前半では58.6%に減少、その後高齢化するにしたがって健康な人の割合は減少し続け、後期高齢者といわれる70代後半から急に低下し39.1%となっています。高齢化とともに健康でなくなる人が増えていることがわかります。

★ビジネスへの活用提案

(1)シニア世代の前半は元気シニア向け商品や、シニア向け健康対策商品
シニア前半の65歳から74歳までは、比較的健康な人が多いため、元気シニア向け商品(サービス含む)として捉えることができます。「&シニア商品(サービス含む)」や「健康予防」として需要が期待できます。「&シニア商品(サービス含む)」とは、シニア世代だけでなく、他の世代にも共通する商品です。例えば「若い女性&シニア世代」のように、健康を意識した商品や少量購入などがあります。

「シニア向け健康対策商品(サービス含む)」としてシニアはシニアの健康に合わせた商品やサービス、老化対策を目的とした商品やサービス、例えば、「聞き取りやすいラジオ」「シニア向け靴・自転車」「高齢臭解消グッズ」「たれない歯磨き」などの需要も期待できます。

さらに、シニアになるとかかりやすい可能性が高い「白内障」「睡眠障害」「関節炎」や、
やや可能性が高い「各種がん」「脳卒中」「心臓発作」「糖尿病」「ドライマウス」「黄斑変性症」「アルツハイマー」などへの対策も重要となります。

(2)シニア世代の後半は介護関連
さらに、75歳以上の後期高齢者になると体力が衰え医療費が増加します。B「シニア向け健康対策商品(サービス含む)」に加えて、C「介護関連用品(サービス含む)」として、
介護や認知症などに対する医療費負担が急増してきます。対象に合わせた対策でシニア向け健康ビジネスが成功させることができます。

(3)ターゲットを絞ることで健康以外の市場も確保できる
基礎的支出である必需品への支出は8割から9割とあまり減少していません。一方で選択的支出といわれる費用は平均では減少していますが、逆に富裕層など、対象を絞る込むことで、健康以外の支出を獲得することができます。

例えば、旅行、クルーズ、スポーツ、教育、カルチャー、グルメ、コミュニケーション関連など、今、シニアでヒットしている商品がたくさんあります。これらの内容は別の号でご紹介することにします。

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(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)