(初出 2013年7月 「元気シニア時代への提言」シリーズより)

大きな潜在需要がある。開拓に必要なのは新しい発想である

シニアのギフト需要は、まだ、未開拓な部分が多く、今は需要としてはまだ大きくありませんが、ますます高齢化する日本にあって、これから開拓の余地が大きいと考えられます。その理由としては、下記の三つがあげられます。

第1には、これから日本の超高齢化に伴う、「人口の増加」。
第2には、高齢者人口が急速に拡大したため、「対応が不十分」。
第3には、シニアは多くの資産を保有しており、「需要開拓の余地が大」。

1. シニアには二つのギフト需要がある

まず、シニアのギフト需要は、通常考えられる「シニアに贈るギフト」とは別に「シニアが贈るギフト」の二つの需要が考えられます。「シニアに贈るギフト」とは、「敬老の日」など、通常、考えられるシニア向けギフトのことです。

二つめの「シニアが贈るギフト」市場の考え方は、シニアの資産保有が大きいことや、シニアは欲しいものが少ないことから、新しい着眼点として、考えられる市場です。

例えば、最近、贈与税対策として実施された「孫への教育資金贈与」は、祖父母が孫に教育資金を援助する際、1500万円まで非課税になる特例措置が大きな話題となっています。シニアが孫のために、1500万円もの教育資金をプレゼントする市場があるということです。まさに、シニアが孫に「贈るギフト」市場といえます。ここに着目すると、シニアから孫への贈りものは、大きな潜在需要があると考えられます。

2.「シニアに贈るギフト」

シニアに贈るギフトとしては、「敬老の日」「還暦祝い」など「長寿の祝い」などがありますが、若い感覚のシニアが増え、「敬老」や「還暦」から始まる「古希」「傘寿」「米寿」など長寿の祝いの意味がピンとこなくなっています。

例えば、かつては還暦祝いに「赤いちゃんちゃんこ」を送る風習がありましたが、今の時代、「赤いちゃんちゃんこ」がどんなものかわからない人が殆どで、今は実施されていません。

新しい試みとして、「緑寿」の祝いを百貨店協会が提案していますが、あまり効果がでていないようですね。

「シニアに贈るギフト」として、72歳の筆者が実感したものは、12年前、60歳になった時、教え子や、家族から「還暦祝い」をしたいと、嬉しい話がありました。しかし、60歳の小生は現役で仕事をしていたので、還暦の実感はなく、お断りしました。が、家族は「還暦祝い」という言葉をやめて、「お父さん頑張って」祝いとなり、家族での楽しい食事会となりました。

一方、教え子たちは、それでも、還暦祝いを実施してくれました。ただし、プレゼントされたのもは、「赤いちゃんちゃんこ」ではなく、「赤いダウン」でした。もう、12年も前の話です。今なら「還暦祝い」は実施されないでしょう。

では、今、筆者とカミサンにどんなギフトが届いているのでしょうか。シニア向けというより、家族祝い事に関係するものです。「父の日」「母の日」「誕生祝い」それに「中元」「歳暮」などです。

とくに、シニア向けと銘打ったギフトではありません。つまり、今のシニア向けギフトは、通常のギフト(「父の日」「母の日」「誕生祝い」など)をシニアに贈る際に発生するものと考えられます。

しかし、シニア向けギフトで厳しいのが、シニアが欲しいものがあまりないということです。ちなみに、「敬老の日にもらいたいもの調査が」では、もらいたいプレゼントが何もないと回答した人が3割もいるという実態がります。(㈱ジー・エフが2009年に実施した調査)さらに、欲しいものとしては、「一緒に食事」すること、という回答が多かったようです。

つまり、欲しいものが少ないシニア向けギフトは、知恵を絞ることが大切になります。そこで、筆者として、いくつかのシニア向けギフトを提案します。

A. 従来型のお祝い日のシニア向けギフトを開発する

シニア市場へのギフト対策としては、従来型のお祝い日に、シニアにとって価値あるプレゼント商品やサービスを創造することになります。プレゼントする商品やサービスに「新しい価値」を持たせることや、シニアがあまり保有していない新しいシニア向け商品をギフトにするのも方法です。

例えば、前者の例では、バラなどの花を年の数だけプレゼントするなどがあります。後者の例では、まだ保有率の低い「タブレット」、新しく開発されたシニアにやさしい「健康に関する商品」、シニアが喜ぶ「サービス(旅行、エステ、マッサージなど)が考えられます。

B. 新しいお祝いの日を開発する

還暦祝いなどが風化し、特にシニア向けに特化したギフトがない今だからこそ、新たな市場創造できるチャンスが大きいと言えます。

例えば、「退職記念日祝い」「健康寿命祝い」「デビュー記念祝い」などが考えられます。
年齢の高いシニアは体力も衰え気力も減少し、欲しいものが少なくなるため、比較的年齢の若い元気なシニア(60代から70代前半)向けに開発が可能です。

★退職記念日ギフト
長年勤務した会社を定年で退職する日を新しく「退職記念日」と設定して、プレゼントを贈るものです。「全集もの」「パソコンやタブレット」「退職記念旅行(クルーズ、ビジネスクラスで行く、ゆったりツアーなど)」「趣味の事始め」などが考えられます。

★健康寿命祝いギフト
健康寿命とは、平均寿命のうち、健康で活動的に暮らせる期間を指します。WTOが提唱した指標で、平均寿命から、衰弱・病気・痴呆などによる介護期間を差し引いたもので、日本人の最新の健康寿命は、男性71歳、女性74歳となっています。この年になっても、元気でいるシニアに「健康寿命祝い」としてギフト市場を開拓するもので、ギフト内容としては、さらに健康で長寿できるように、健康によい商品やサービスを選び、プレゼントするといいですね。

★デビュー記念日ギフト
新ギフト提案として「デビュー記念日」ギフトを考えます。「デビュー記念日」ギフトとは、新しい趣味、おけいこごと、スポーツ、地域デビューなどを始めた日をデビュー記念日として定め、初心を忘れないようにプレゼントするもので、デビュー記念日にふさわしいものを選びプレゼントするものです。デビューに関連するグッズや、デビューの気持ちを書くグッズなどが考えられます。

3. 「シニアが贈るギフト」

一方、「シニアが贈るギフト」には、孫へのプレゼントがあります。記念日としてはすでに「孫の日」や孫の誕生日や節句などの成長に伴う祝い事があります。この市場を「シニアが贈るギフト」として、もっと、大きく育てたらどうかという提案です。

筆者がここに注目する理由は、「子育て世代は生活がかなり厳しいため、満足な贈りものができません」が、資産が多いシニアにとっては、十分な贈りものができるからです。

「孫への教育資金贈与」が人気となりました。といっても、これまで相続税がかかるのは僅か4%程度のものが、改正により7%まで広がる程度の内容にもかかわらず、多くのシニアが孫への教育資金非課税を目的とした貯蓄を始めています。

また、「緑の贈与」と言われる太陽光や風力発電に高齢者が出資し、売電収入を子供や孫にプレゼントする「緑の贈与」という仕組みが注目を集めています。

ご紹介した二つの制度は、かなり長期的なものですが、もっと、短期的なプレゼントの開発が可能となります。

高額な孫への資産贈与プレゼントの背景には、70代後半から80代以降、つまり、後期高齢者にもなると、体調も十分でない人が多く、欲しいもの、したいこともあまりないシニアが増えています。保有資産があっても、自分のために使う意欲も少ないのが現状です。孫のためなら、使ってもよいというシニアも多いからです。

逆に、60代の比較的若くて元気なシニアは自分たちのために、保有資産を使うため、孫にまでは、多額のプレゼントは出せないかもしれません。

現に、72歳で元気な筆者は、「孫への教育資金贈与」のニュースに、自分にはあり得ないと思っています。今、保有している資産は自分たちの今後のために必要なもので、今から孫にプレゼントできないと思ったからです。

★孫の成長に合わせたギフト
孫の成長に合わせたシニアからのプレゼントがあります。資金的にみて、両親ではちょっと手がだせないものをジージやバーバからプレゼントするものです。教育資金贈与から考えれば安いものです。

例えば「2分の1成人式」として、孫へのプレゼントがあります。一般の人は、あまり知らない方も多いようですが、今、多くの小学校で実施されています。

筆者も孫が通う小学校の「2分の1成人式」を見学に行きました。孫が「将来の夢」を全員の前で語っていました。孫の話を聴いて何とか実現させてやりたいと思ったものです。

★孫と一緒にシニアが楽しむギフト
孫だけではなく、「孫と一緒にシニアが楽しむギフト市場を創造する」ことで、シニアのギフト需要を拡大するものです。例えば、「孫旅」で検索すると沢山の旅行やホテルプランが出てきます。祖父母、父母、孫の3世代で楽しむプランで多くのサービス業者が実践しています。食事や旅行だけでなく、カルチャーなども加えると、多くのサービス消費につながります。

★シニアの自分への御褒美ギフト
若い女性が「自分への御褒美」というプレゼントが流行りました。あまり、お金を使わない、節約をモットーとするシニアにも、少し贅沢に使う気持ちにさせるのが、シニアの自分への御褒美プレゼント市場の開拓です。

年金がたよりになるシニアは意外と節約志向が高いのが実情です。そんなシニアにも、少し贅沢をさせるチャンスとして、「シニアの自分への御褒美」ギフトとして捉えることができないかと考えています。

毎年ではなく、5年に1度くらいは、「シニアの自分への御褒美」ギフトという発想で、ちょっと贅沢をさせる提案ができないでしょうか。例えば、「クルーズで世界旅行」「ビジネスクラスで海外旅行」「素敵な海外でロングホームステイ」などがあります。

「シニアへのギフト需要を開拓する」テーマに対する、元気シニア時代への提言

今回の内容は、シニア向けというより、シニア向けビジネスを考えている企業向けの提案を含め本文の中で、多くの提案アイディアを出しました。

実現は簡単なものではありませんが、着実に増加する日本の高齢者に対してのギフト市場は大きな潜在市場があります。

最後に、今回はシニア向けのギフトの提言を行いましたが、シニアは「沢山の財産を残したまま、天国に行くより」まずは、自分のために、G:元気で、T:楽しく、I:生きがいをもって、PPK:ピンピンココロリと、人生を全うすべきと思っています。

さらに、家族や孫が元気になる思いを込めたシニア向けギフトが開発されれば嬉しい限りです。
(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)