37号ではシニア全体の支出からシニアの消費を分析しました。その結果、ほとんどの支出が減少し、医療費のみが増加する、まさに高齢化社会の課題が出てきました。まさにそのとおりです。でも、この結果からだけではシニアビジネスの可能性はひとつしか発見できません。

ここで、考えたいのがシニアビジネスの難しさです。それはシニアは収入格差が大きく、「瓢箪構造」になっていることです。つまり、シニア世代の財布は平均値にはあまり人が存在せず、瓢箪のように、上層と大衆層の2極に分散していることです。平均値に多く分布する「そろばん球構造」になっておれば、平均値分析でシニアの実態が把握しやすいのですが、2極化している現状では、平均値からでは十分な分析ができません。

かつて日本が高度成長期を迎える時代は、一億層中流化と呼ばれるように、ほとんどの人が平均値にあり、一緒に上を目指したものです。この一億層中流化社会では、平均値に多くの人が存在します。つまり、平均値分析での市場把握が重要になります。3種の神器と呼ばれる商品が登場し、その商品が欲しいため、国民全体で頑張った時代があります。3種の神器が売れに売れました。それは、「そろばん球構造」になっており、平均値に多くの人が存在していたからです。

さて、現在のシニア社会のように、2極化している時代では、平均値分析による消費分析は、方向として間違ってはいませんが、個々の実態にあっていない場合があります。例えば、大きな需要ではありませんが、今、シニアに人気の船旅クルーズ旅行、増加している観劇、普及途上にあるスマホなどは、まさに平均値ではなく、ライフスタイル分析などによる小さな塊のニーズの把握が必要になります。

シニアのライフスタイル分析による提案

そこで筆者が考えたのが、シニアのライフスタイル分析です。シニアをひとくくりにすると市場は大きいのですが、実態はいろいろな生き方をしているので、もっと細分化して分析することで、市場を明確に捉えることができます。ライフスタイルによって、いくつかに細分化し、小さな塊にすることで、そのライフスタイルの人たちを「そろばん球構造」
としてまとめて捉えることができるというものです。

分析方法として使用したのが、シニアの関心が最も高いものと、2番目に高いものを基準に考えるライフスタイル分析です。参考にしたのが、ソニー生命保険が2013年9月に実施した「シニアの生活意識調査」です。

この調査によると、現在の生活でシニアが一番大切にしているものは1位「健康」、2位「お金」、3位「子供・孫」、4位「パートナー」という結果となっています。そこで関心が高い、1位の「健康」を横軸、2位の「お金」を縦軸にとり、ポジショニングマップを作りました。その上にシニアのライフスタイルを8つ想定し、独自の名称を付けました。以下に8つの対象について、推定人口シェアや特徴に触れてみました。なお、推定人口シェアは、ライフスタイル別調査データがないものは筆者の独断推定により作成しましたのでご了承ください。

8lifestyle

1. プレミアムシニア

1億円以上の資産を保有するシニアを指します。収入は多いのですが、健康に関しては、普通程度です。この層は資産運用や財産管理などへの興味が高く、資産運用、別荘・会員権ビジネス、高級旅行などにビジネスチャンスがあります。

2. 行動派シニア

保有資産も元気で多く活動的なシニアを行動派シニアと呼びます。ゴルフ会員権や別荘、高級車などを保有、海外旅行も良く出かけます。海外旅行、クルーズ、スポーツ(ゴルフ、マラソンなど)イベントなどの需要ガ期待できます。

3. エンジョイライフシニア

趣味やグルメなどを楽しむシニアがエンジョイライフシニアです。カメラ、絵画、園芸、音楽、料理、近場の旅行などの趣味や仲間とのグルメやカルチャースライフにビジネスチャンスがあります。

4. 悠々在宅シニア

リタイア後、自宅に閉じこもり、人との接触や、仲間との会話もあまりしないシニアを悠々在宅シニアです。自宅での時間が長く、外出も少なく、運動量も少ないため、健康が気がかりです。健康関連などの通販需要が見込めます。

5. アクティブシニア

シニアになっても仕事や、社会貢献活動などで活躍する生涯現役を続ける人たちです。高い専門能力や広い人脈をもち、精力的に活動している人たちです。多くの人はIT活用もでき、収入があり、旅行、趣味、スポーツや各種パーティなどのビジネスチャンスガあります。

6. リーズナブルシニア

リタイア後、保有資産が少ない上、受給年金額少ないものの、活動的な生活を送る元気なシニアがリーズナブルシニアです。元気な上に少ない収入に合わせた生活を送ることができる賢いシニアで、格安で参加できる趣味や旅行、バスツアー、さらに販促手段としては割引などにチャンスがあります。

7. ぎりぎり生活シニア

保有資産も少なく、年金受給も少ないため、ぎりぎりな生活を余儀なくされている人たちがぎりぎり生活シニアで、健康への心配もあります。家庭でのテレビ視聴、公園散歩、ビデオレンタル、無料・格安料金利用、生活費が少ないため、ビジネスチャンスはあまりありません。

8. 要介護シニア

要介護生活をおくるシニアです。高齢化すると、健康でない人が増え、体力の低下や、介護生活を送る人が増えます。その中で要介護の人たちがこのグループに入ります。在宅介護や介護施設での生活など、介護保険の世話になっている人達で、介護ビジネスにチャンスがあります。この需要はシニアの高齢化がますます進むため、ビジネスチャンスは着実に拡大してまいります。
(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)