(初出 2012年2月 「元気シニア時代への提言」より)

団塊世代の退職で、本格的なシニア時代に突入!「金時もち」だけでは孤独で楽しくない、デジタルで新しい絆づくりの時代に

2012年、700万人団塊世代がいよいよ定年を迎え、65歳以上の人口が今後、急速に増加します。お金と時間の両方をもっている今のシニアを「金時もち」と博報堂生活総合研究所所長・関沢英彦が命名しました。一区切りついた裕福層が若いころには会社の仕事一筋でやりたくてもできなかったことに対する反動として、ゆとりを求める行動に出るようになっています。

「金時もち」は、「国内旅行」「健康づくり」「芸術鑑賞」「配偶者との交流」を重視して生き方をしています。一方で、退職すると会社関係での付き合いがなくなり、個人での仲間づくりになりますが、企業で活躍した企業人と言われる人ほど、個人での仲間がいないのが実態です。

しかし、デジタルシニアと言われる人たちは、インターネットやメールなどのデジタルを通して仲間を増やし、新たな絆づくりを積極的に行っています。デジタルシニアという言葉は、電通がなづけたものです。さすがですね。それを支えるのは、インターネット、メール、パソコンの活用です。

パソコンが使えるシニア、70代で4割も

実際に、2010年の国の調査では、パソコンが使える高齢者が、60代前半で7割、60代後半で6割、70代でも4割使用するという結果が出ています。思ったより高い数値です。71歳の執筆者の仲間との関係で実感するのは、もっと低いイメージです。それは、パソコン活用のレベルが影響しているようです。

デジタル写真集オンラインサービスを運営する株式会社DigiBookが60歳から79歳までの男女800人を対象にインターネット経由で行い2009年9月に発表した調査があります。この調査によると、「パソコン・インターネット」を趣味にしたいと考えているシニア(=デジタルシニア)層は63.5%おり、国の調査とほぼ同じです。その内96.1%の人が「ほぼ毎日」パソコンを利用しています。

使用目的は、情報検索、電子メール、ネットショッピングが中心、ブログやSNSは10%程度

同調査によるとデジタル・シニア、主な利用目的は多い順に下記のようになっています。
1位:「情報検索」(79.8%)、
2位:「電子メール」(77.1%)、
3位:「ネットショッピング」(68.6%)が高く、
4位:「ブログ」(10.9%)、
5位:「コミュニティサイト」(7.6%)、
6位:「掲示板」(6.6%)
の順で、デジタルシニアの利用は情報検索や、電子メールでの使用が多く、ブログやユーザー参加型サイトの利用は、あまり高いとは言えないようです。

シニアのパソコンの活用スキルは低い

このように、デジタルシニアが、パソコンが使えるといっても、そのレベルはあまり高くありません。パソコンが使えるレベルを執筆者なりに、低い順に4段階に分けてみました。

「デジタル初心者」情報検索や電子メールのやりとりできる。
「デジタル中級者」ネットショッピングができる。
「デジタル上級者」サイトに書き込み、SNSでの発信(写真など)ができる。
「デジタル最上級者」ホームページ作成や勉強会情報をメルマガ配信やBCCメールで一斉送信できる。

このように分析すると、今のデジタルシニアの多くは、「デジタル中級者どまり」となっているような気がします。

若い人が普段に行っているサイトへの書き込みができる「デジタル上級者」以上の人は、筆者の想定では、僅か10%前後です。デジタル上級者と呼ばれる人達は、デジタルをうまく活用し悠々自適な生活をおくっていると考えられます。

実際に、元気シニアネットワークのサイトへの書き込みをお願いしても、書き込めない人が多いのを実感しています。多くのシニアは、検索エンジンで目的のホームページを発見しても、トップページしか見ないという実態があります。どうしたら、次のページに入るかわからない人、サイトマップやスキップの意味がわからない人が沢山います。

あるサイトでは、「ここをクリックする」と表記したことで、内容を読んでいただくことができたといいます。デジタルシニアと言っても、レベルが低いことを理解しないと、シニア向けのネット活用はうまくいきません。

別の調査でも、デジタルシニアの6割がネットショッピングを利用

電通と東京大学との産学共同研究組織「DENTSUデジタルシニア・ラボ」はネットを積極的に利用しているシニア(デジタル層)とネットをいっさい利用していないシニア(非デジタル層)について、調査を実施しています。2011年2月11日~28日に60才から74才までの生活者計600人(デジタル層300人、非デジタル層300人)に対して行ったもので興味深い結果が出ています。

「デジタルシニア」、6割がネットショッピングを3割がネットオークションを利用

この調査でいう、デジタルシニアは普段ネットを、メールのやりとりの時間は除き1日30分以上利用している人、一方、非デジタルシニアとは、ネットの利用は(メールもメール以外の活動も含め)一切行わない人を指しています。

まず、デジタル層へ「パソコンのインターネットで行うこと」を聞くと、「行うことがある」と回答した人がもっとも多かった行動は「ネットショッピングで商品・サービスを購入する」(59.7%)「チケットを予約する」(48.3%)で先の調査よりやや低くなっています。「ネットオークションに参加する」(31.0%)レベルのやや高い行動は先の調査よりやや高くなっています。ネットショッピングでは「店頭で買うより同じ商品が安く買える事」(55.7%)が重視ポイントの第1位となっています。

一方、パソコンを使用しない非デジタル層に対して「ネットを使っていないことで感じる不便や不利益」を聞くと、「何かに応募したいときに応募方法がインターネットとなっていたため断念した」という項目を挙げた人が22.0%で最上位でした。第2位は「インターネットを使えればもっと安く商品を買えると思うことがある」(21.0%) という結果でした。

もしインターネットを使える環境にあったらどんなサービスを利用してみたいかを聞いた質問では、「駅の窓口で並ばなくても、混雑時の電車の切符が購入できるサービス」(34.3%)や「昔のテレビ番組が見られるサービス」(31.7%)、「旅行代理店に行かなくても、旅行の手配ができるサービス」(31.3%)などの項目が上位に挙がりました。

同調査では、「資金力が高いとも言われるシニア層ですが、実は非常に価格コンシャスな面を持つことも分かりました」と分析しています。

男性のデジタルシニアへの志向が高い

先に紹介したDigiBook社の調査結果によると下記の結果がでています。

今後も継続して趣味にしたいこと、力をいれたいことは、パソコン・インターネット

「今後も継続して(あるいは今後あらたに)趣味にしたいこと、力を入れたいことは」という質問に対しては、「パソコン・インターネット」と答えた割合が全体の65.3%と最も多い結果になりました。

女性の2位「ガーデニング・観葉植物」が40.3%である一方、男性の2位「写真・カメラ・デジタルカメラ」が44.3%と高く、男性シニア層のデジタル志向(デジタルシニア化)が進んでいることが読み取れます。

パソコンのメリットは「情報が得やすい」「知識が増える」「老化防止に役立つ」の順

「パソコンを使うことで、あなたにどのような影響を及ぼすか」という質問に「情報が得易くなる」(91.4%)、「知識が増える」(72.0%)、「老化(ボケ)防止に役立つ」(64.1%)といった回答が上位である一方、「個人情報流出への不安が増える」(42.0%)、「不要な情報に煩わされる」(19.0%)といったインターネットに対する不安も決して低くないようです。

デジタルが活用できれば、もっと仲間が増え、もっと幸せになれる

パソコンを使用している人は、もっと使いたいと思っているようですが、なかなか使いこなせないシニアが大半です。さらに、これからパソコンを使いたいと思っているに習うきっかけがなく、パソコンを使えない潜在需要者も沢山います。

そのため、行政が実施するパソコン教室は大変混んでいます。多くのシニアは、インターネットやパソコンをもっと使いたいと思っています。この人たちがパソコンを使いこなすことができれば、シニアライフはもっと楽しくなります。

とは言ってもシニア向けのパソコン教室を開いたものの、告知活動がうまくいかなかったり、パソコンを習う動機付けが弱く、なかなか集客できない実態もあります。

デジタルシニアが増えることが、元気で楽しいシニアライフを楽しむシニアが増え、30兆円にもなる、医療費削減につながると筆者は思っています。
(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)