(初出 2012年5月 「元気シニア時代への提言」シリーズより)

シニア向け販促策を考える上で、大切なことは、シニアの生活を知ることです。では、シニアの生活ってどうなっているのでしょうか。

第1に、生活費の点を考えた販促対応です

多くのシニアの収入源は年金になります。もちろん、資産がある人、働いている人などは、年金以外の収入があり、ゆとりある生活が可能です。でも、大半の人たちは「年金」と言う限られた収入での生活になります。

では、シニアの人達はどのくらい年金をもらっているのでしょうか。

高齢無職世帯は、1カ月平均21万8千円で、月に5万8千円の赤字になる

世帯主が60歳以上の2人以上の無職世帯(高齢無職世帯)の実収入は1世帯当たり1カ月平均21万8千円で、その8割強が公的年金などの社会保障給付です。また、実収入から税金や社会保険料などを差し引いた可処分所得は18万7千円(187,385円)です。一方、消費支出は24万6千円(245,870円)で、可処分所得を5万8千円(58,485円)上回り、赤字になっています。

年金での不足は、貯蓄など、資産と取り崩しになります。結構、厳しいですね。そうなると、シニア向け販促策として最も重要なのは、「割安提供型販促施策」です。

第2に、体力の点を考えた販促対応です

60代から70代前半のシニアは、まだ元気な人が多いのですが、70代後半以降、80代、90代となると足腰が弱くなり、外に出られなくなったり、自分一人での生活が厳しい人も増えてきます。

そのため、シニアの体力をカバーする施策が重要になります。そこで求められるには、シニアの体力などを考えた「生活補完型販促施策」です。

第3に、資産はあるのに、あまり消費しないシニアに消費を促す対応です

シニアの資産は全世代の中で最も多くなっています。しかし、沢山もっているのにかかわらず、あまりお金を使わないシニアが沢山います。資産を多く保有しているシニアが消費しないと、日本はデフレから抜け出すことができません。そこで、お金を持っているが、あまりお金を使わないシニアに対し、楽しい生活提案する「楽しい提案型販促施策」を実施することで、消費を促すものです。

第4に、個々の対応ではなく、シニアの課題をまとめて対応するものです

シニアが抱える問題をばらばら対応するのではなく、多面的なサービスを含め、シニアを組織化し、囲い込みする「顧客の囲い込み型販促」も考えられます。保守的なシニアですが、一旦信用すると、長く利用する特性を活用するものです。

この四つについて、どんな販促策がシニアに求められるかを現在、実施されている販促施策やこれからお勧め販促提案を含めご紹介しましょう。

1. 金銭的なことを考慮する「割安提供型販促施策」

生活費が厳しいシニアには、「割引き」「無料」などの特典が喜ばれます。

●シニア無料招待サービス
行政が地域住民に対して、行っているサービスにシニア無料サービスがあります。
実施する行政によって、内容は異なりますが、筆者が在住する東京都渋谷区では、下記のものがあります。
★高齢者入浴無料サービス、第1第3日曜日、銭湯無料
★スポーツ施設 利用無料サービス
★都バス無料パス など

●シニア割引き料金
今、多く実施されているにが、映画のシニア料金はじめ、多くの観光施設や航空券などがシニア料金で利用できます。
★映画館などが実施しているシニア割引き料金
1000円で映画を見ることができます。映画館だけではありません。多くの観光施設でシニア割引きが実施されています。

●シニア平日半額割引
カラオケの「歌広場」では、シルバーサービスの会員になると、平日利用が半額になります。

●シニア利用5%割引
スカイラークグループのバーミャン、ジョナサン、夢庵、ステーキガスト、藍屋で期間限定で60歳以上のシニアが利用できる「プラチナカード」5%割引きがあります。

2. シニアの体力などを考えた「生活補完型販促施策」

シニアになると体力が衰えて、切れた電球の交換ができなくなります。まして、一人住まいとなると、電球の交換のために、遠方から身内を呼ばなくてはなりません。さらに、商品の組み立てなどができなくなります。

一方、朝早く目覚め、散歩にでかけ、朝食を食べたくても、休みのため、食べることができません。こうしたシニアの体力を補完する販促策も効果が期待できます。

●組み立てサービス
組み立て家具や、取り付けが必要な商品に対し、無料や有料で行うサービスです。
家電、家具通販会社などが実施しています。

●早朝営業
朝の目覚めが早いシニアを考慮して、スーパーなどが、朝の営業時間を早めるものです。
最近、実施する企業が増えています。

●宅配サービス、移動店舗販売
スーパーやレストラン、コーヒーチェーンなどで、宅配サービスを実施する企業が増えています。全国600万人もいると言われる、買い物に行けない人達に、宅配サービスや移動店舗販売などのサービスがあります。

3. シニアに楽しい生活提案する「提案型販促施策」

沢山の資産を保有しているにも関わらず、あまりお金を使わないシニアに対して、シニアの楽しい生活を提案することで消費を促すものです。

●趣味を楽しむ提案
多忙なビジネスパーソン時代に趣味もなく過ごした働きバチシニアに対して、趣味の楽しさを味わっていただく提案です。無料教室や、割安教室などを開催し、趣味の楽しさを提案し、趣味に関する消費を促します。
★絵画を楽しむ
★音楽を楽しむ
★自分史を楽しむ
★麻雀を楽しむなど

●パソコンを使った楽しい生活提案
パソコンが使えないシニアにパソコンの使い方と、パソコンを使った楽しい生活提案を行うものです。最近、デジタルシニアなど、Webを使いこなすシニアが増えていますが、使い方がわからないシニアに、使い方から、楽しみ方まで提案することで、消費を促します。
★シニア向けパソコン教室で使い方を学ぶ
★情報検索、ネット購入、デジカメでパソコンを楽しむなど
★フェースブックなど、SNSを使った楽しい仲間づくりなど

●仲間づくり提案
孤独になりがちなシニアに対して、仲間と一緒に楽しむ機会を提供するものです。
★麻雀教室や大会
★歌声喫茶など

●孫との楽しい生活提案
シニアにとって、目にいれてもいたくないのが「孫」。「イクジイ」という言葉も登場、孫の世話をするシニアも増えているようです。
その孫との楽しみ方や、孫へのプレゼントなど、楽しい生活を提案することで消費を促すものです。

4. シニアを組織化することで、囲い込みする「顧客の囲い込み型販促」

シニア個々の消費は、そんなに大きくはありません。そこで、シニア個人の消費をここではなく、あるジャンルの消費、全部取り込むと言う発想が「シニアの囲い込み」、つまり、シニアの組織化です。

企業が主宰する「シニアの会」に参加いただき、シニアが喜びそうな前述の特典を行うことで、シニアの需要を獲得するものです。金融機関、旅行関連企業などが実施しています。
★「大人の休日倶楽部」
例えば、JRが実施している「大人の休日倶楽部」は有料にも関わらず、JRが割安で利用できるなどの特典で人気となっています。
★シニア空割
65歳以上のANAマイレージクラブ会員がご購入できる割安運賃です。
★JAL 当日シルバー割引
JALカード、JALマイレージバンクカード保有者対象の割引き運賃です。

シニアの消費を取り込む販促手法をいろいろ紹介してきましたが、71歳の筆者も、シニア向け販促を結構利用しています。映画の割引き、お店が実施するシニア割引き、渋谷区のシニアサービスなどです。

一方で、こうした割引き制度を利用する際に、なぜか後ろめたさを感じます。受付での店員の対応が悪いと、活用するのをやめたいと思うことがあります。シニア客へのお店での対応は、しっかりと気遣いしてほしいものです。人生経験が豊富なシニア客を獲得したいなら、お店の対応こそが、成功の秘訣と考えます。
(日本元気シニア総研 顧問 富田眞司)